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これまでに書いてきたもの     「真、行、草」 「懐石と茶事について「床の間の話」 「花びら餅」 



利休七則の中に「炭は湯の沸くように置き」とありますがお茶を点てるためにはまず火をおこしてお湯を沸かさねばなりません。
また、冬の茶席には手あぶりという暖房のための小さな火鉢があり、煙草盆の中にも火入れという煙草に火をつけるためのものがあり、いずれも炭が必要になります。
茶席で使う炭は夏と冬では寸法が違います。
夏は風炉という土や銅、鉄などで作ったものの中に灰を入れ、そこに炭をおこして釜を掛けますが、冬は畳にあらかじめ炉を切ってたっぷりと灰をいれ、炭もたっぷりとおこして大きな釜を掛けます。もともとは囲炉裏からヒントをえて利休が考えたものといわれています。囲炉裏ですから暖房もかねているわけで、足元から温めて釜から立ち上がる湯気も暖かさを増すものになります。
そういうわけで、炉の炭は大きく、風炉の炭は小さく切ります。

20年くらい前まで、炭は炭俵という入れ物の中に長いままに入っていて、炭屋さんに一年分を届けてもらい、それを自分で寸法通りに切って蓄えておくという大変な仕事がありました。姉さんかぶりで手拭いを頭にかぶり、口元もしっかり覆って作業をするのですが、仕事を終わった時には出ている部分は真っ黒のクマゴロウみたいな格好になり、いくら口を覆っていても、後でうがいをするといつまでも黒いものが出てきて困ったのも今になるといい思い出になっています。それを洗ってから保存しました。
今はすべて寸法通りに切ったものがセットになってお茶道具屋さんに売っています。
しかし、その炭もだんだん生産者が減ってきて、今や中国で焼いて輸入しているものがほとんどとか。
たしかに、焼き鳥屋さんで使うくらいしか日常生活の中で使われなくなった炭、ましてやお茶の炭のように太さや形にこだわるものはそれほど多く需要があるわけではないので、生産者がそれで生計を立てることが難しくなっていることは確かです。

値段も年々上がっていき、お金に火をつけている気分になることもあります。

 炉  風炉  箱炭斗  風炉の炭道具
       

※上の写真は炉や風炉、そして炭などの写真です。
  炉は11月から翌年の4月まで、風炉は5月から10月まで使います。
  一番右は風炉の炭点前をするときの道具です。 


それでは炉の中で炭が熾きていく過程をお見せせしましょう
     

真ん中の写真は撮る方向が逆でおかしいのですがお許しを

私は炉の中で赤く熾きている火を見るのが好きです。
初めに三本入れた下火に炭点前でさらに炭を足して、香をいれ釜を掛けますが、それが時間の経過とともにピシッというかすかな音をたてながら火が新しい炭に移っていき、やがてお釜のお湯もかすかに松風のような音をたてて沸いてゆきます。 

茶事という正式のお茶会では、炭点前が終わりお湯が沸くまでの間にお食事を差し上げます。
この後の濃茶を美味しく飲むために軽い食事をしてお菓子を食べるというのが前半の行程です。

その間に炉の中ではこんな変化がおきています。
一方風炉の場合は季節が夏になるので火はお客様から遠ざけて、炭も小さく少なく入れています。
灰型といって草木灰を篩で細かくふるったものを風炉にいれて灰さじを使って形を作ります。

 


                                                    2014/1/24 記

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